15.
CDのビットレート
15.1. CDのビットレート
デジタル伝送の性能の一つとして、一秒間に伝送する総ビット数をみるという方法を学びました。では、身近なCDはどういう性能でしょうか。
CDは量子化ビット数=16ビット、サンプリング周波数44100ヘルツ(44.1キロヘルツ)です。そしてステレオ2チャンネルの伝送をしますので、これを2セット記録伝送しています。
つまりCDは、一秒間に、
16ビット×44100回×2チャンネル=1411200ビット
のデータを扱うわけです。
このように、一秒間に伝送する総ビットをビットレートといいます。つまりCDは、毎秒1411200ビットのビットレートである、といいます。また、ビットレートは以下のような表記方法があります。
1441 kbps (bit per secondの意味で、よみかたはキロビーピーエス)
1.441 Mbps (Mega bit per secondの意味で、よみかたはメガビーピーエス)。
1441 kb/s
1.441 Mb/s
また、この数字は、大雑把にデータ密度を把握するためのものですから、あまり数字を細かく言っても意味がありません。したがって「CDは、1.4Mbpsである」という程度の使い方が普通です。
(参考)
CDから取り出される音楽データは1.4Mbpsですが、実際のディスク上にはもっと多くのデータが記録されています。
というのは、まずサブコードといって、音楽以外のデータが含まれているからです。また記録再生にはエラーがつきものですが、CDのシステムにはディスクから読み出したデータからエラーを取り除き、エラーを修正する能力があります。そのために、音楽データにエラー訂正用の冗長ビットというのを追加しておきますが、これも同時に記録しておくからです。
またCDのシステムを流用したCD-ROMシステムは、音楽用より強力なエラー訂正をかけるため、音楽用より使えるデータエリアが少なくなっています。
15.2. ビットレートは時代とともに速くなる
このビットレートを高くしようとすると、まずメディアにたくさんビットを刻まねばなりません。つまり記録密度が上がるということです。
しかしメディアの記録密度には限界があります。CDは記録面に機械的な凸凹をつけて、これをレーザー光線で読み取るという仕組みです。つまりデータをたくさん刻むということは、この凸凹を小さくすることになります。
しかし凹凸をあまり小さくすると、読めなくなります。というのは、レンズには解像度がありますから、あまり小さい凸凹だとピントがあわなくてぼけてしまうんですね。
実際、CDの規格を作った10年前当時の技術では、現在のCDの凹凸が、記録したり読み出したりする最小の大きさでした。
しかし、1.4Mbpsのデータレートは十分に音質が良く、このレートで直径12センチのディスクに74分の音楽が記録でき、またとり扱いも易しかったので、音楽を記録する媒体としてあっと言う間に普及したわけですね。
というわけで、CDが開発された当時は、光学記録のディスクメディアの伝送レートとしては、1.4Mbps程度が限界でしたが、10年たって登場したDVDでは、CDの7〜8倍の記録伝送容量を持っています。
これは音よりもたくさんのデータを必要とする映像を記録するために作られた規格ですが、もちろん産業全体の技術レベルが進歩したために可能になったわけですね。
さあ、これでとうとうデジタル信号の本当の姿が見えてきました。一本の信号線でデータと同期信号を伝送する仕組みもわかりました。ビットレートという概念もわかってきました。
次回は、デジタル信号はノイズに強い、壊れない、という、デジタル化のメリットの話に進みたいと思います。
(制作/著作 かないまる 2000年8月27日)
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