打感がよくなるストレス抜きと調音ワザ
初稿 111029
更新 120310
メインが張り終わって、これからクロスに入るというところで使うノウハウをご紹介しましょう。スカッシュではアラウンドザワールドを行うことが多いですが、その場合は、その直前です。
ここでかないまるはストレス抜きと調音という作業をしています。
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メインは張るときにどんなに気をつけても、テンションにはバラツキが出ます。理由は、ホールの角度が一定でないためです。
スカッシュラケットではグリップ付近の最初の4穴。テニスではスロートとリングの接続点付近で、ホールの角度が大きく、またホールが長い部分があります。ここはマシンテンションが摩擦でロスして、ラケット面内の実質テンションが低くなるのが普通です。
このような部分ではマシンテンションをあげる (テニスで2ポンド、スカッシュで1ポンド)、マシン側のストリングを手で数回押す(面内のテンションがあがります)なども有効です。プロはこのワザで面内のテンションバランスをとったりもします。しかしアマチュアはそんなことはなかなかできません。
また、かないまるのストリングマシンは止まるときに小さく二度引きしますが、ストリングの動きが制止摩擦に捕まってラケット内のテンションがばらついていることがあります。
そこでかないまるは、メインが張り終わったところでストレス抜きと調音という作業を入れています。
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ストレス抜きは簡単で、メインを一本ずつ順番に押す (または引く) だけです。だいたい1〜2センチ押せば十分です。
これでグロメットにたまっていたストレスあると「カチッ」という感触と同時にストレスが抜けます。
慣れてくるとこの仕事はメインを一本張るごとにやるのがよいのですが、少なくともクロスを張り始めてからストレスが抜けると、そのメインが緩んだままになり、打感が大幅に悪くなります。
この作業は簡単ですが、打感のためには大切な作業です。
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調音はこれに比べるとかなりマニアックです。これはストリングを弾いて音を聴くという作業です。琴やハープのように引っかいて音を出すと、一本一本のテンションのバラツキがわかります。機械で張ったままでは、ストレスは抜けても、まだ音程がばらついていることがよくあります (ばらつかないようなら、それはストリンギングが上達したということです)。
全部のメインをはじいて、まず低い音程のストリングを見つけます。その両側の音を聴き、高い音のストリングをググっと押し下げます。両隣の音程が大差なければ、両隣を同時に押します。

ある程度押すと、ストリングが摩擦を振り切り、「ククッ」と感触が来ます。ストリングがホール内で動く感触です。同時にテンションが移動します。再びストリングをはじくと、低かった音が高くなっています。
高すぎたら少しもとに戻すなどして根気よく調整します。一本のメインの中央を押せば、緩いストリングからテンションが来るのが普通ですが、コントロールしたい場合は、中央を押しながら、テンションをあげたいストリングにつながる側のホール付近を押し足します。すると希望の方向にストリングが移動します。
移動すると今度はテンションがあがりすぎて、最初は堂々巡りになったりするかもしれませんが、是非加減を習得してください。最終的には中央から周辺にむかってほぼ同じ音程でわずかに音程が上がって行くようにしあげます。
これ、やるとやらないとでは大違いです。調音をやると打感が大幅によくなります。また張り上がり後のテンション抜けが大幅に減ります。
調音は、クランプが外れてしまい、張っている途中でテンションが抜けてしまった事故のときの修復作業にも使えます。外れたストリングを引っ張りながら、抜けてしまった最初のほうのストリングにどんどんテンションを移動してあげます。最初から張り直すよりはストリングの痛みがすくないと思います。
なお高級なガット張り機では、一度ハイテンションまで張って、一度緩め、再び設定テンションで止める機能がついているものがあります。かないまるのマシンは、設定テンションで一度止まり、一度緩め、直ちに設定テンションまで引いて止まります。「タン、タタン」という音がします。どちらもテンションの引っ掛かりを防止する機能です。分銅の場合は、分銅を降ろし、一度持ち上げてもう一度下ろすことをしていました。これでテンション抜けはほとんど防止できますが、一度全部のメインを押してみることは大切です。
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メイン同様、クロスも引いた直後にストレスがたまります。ただしたくさんのメインを引きずるためか、一本一本の引っ掛かり方がばらつくということはあまり感じません。
むしろクロスを引くたびに全部のメインを引いた方向に引きずり、メインが全部横ずれして止まってしまうことをケアすることのほうが重要です。
これにらついては
スカッシュではメインを指でハープのように全部はじけばOKです。
--120310追記----
なお、プロ(とくにテニス)はここでストレス抜いたり調音したりはやりません。拝見していると文中に書いたように、メインを一本張るごとにオウルでストリングを引き足して、ホールのところの引っ掛かりを取っています。ハープ弾きをやらせていただいたこともありますが、見事にいい音がしました。
もちろんアマチュアもメイン一本張るごとにメインを横押しすることはやるのがよいのですが、かなり奥が深いことは指摘しておきます。
というのも。プロの仕事を観察していると、実はストリングマシンのテンション機構が動いているようなのです。これは恐らくテンションロスが抜ける領域をすぎており、引き増しになっていると思います。つまり機械テンションのあと、手引のテンション追加の要素があるわけです。プロはこれを利用して、張り始めと張り終わりで横引きの強さをコントロールしてテンションバランスをとったりもしているようです。
しかしこれを素人がやると、その日の気分でテンションが違ってしまったり、概してテンションが高めになりすぎます。折角機械にテンションを任せているのに、そのテンションが狂うのです。
またとくにスカッシュはテンションが低いので、オウルで引く人力がかなりのテンション追加になります。丹念にやったつもりが2〜3ポンドもテンションを高くしてしまう恐れがあり注意が必要です。
ちなみにプロに頼んでも同じテンション指定でストリンガーによってテンションが違う最大の理由は、一つはマシンのクセ。もう一つはテンションロスをとるためにオウルで引き足す強さが人によって違うからだと思います。
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