クロスを張る


初稿 111029


では最後、クロスをどんどん張って行きます。



クロスはストリングを痛めないために、メインとの摩擦を小さくする工夫が必要です。クロスを引くときは、この画像のようにオウルを使って十分な弛みを作りながら引きます。

弛みの作り方にもコツがあって、ストリングが入る側を山にします。



これはプリレーシングの画像です。これから引くストリングはしたから二番目ですが、引く前にもう一本ストリングを通します。これをしないでクロスを引くと、クロスは向こう側に向かって膨らんでしまいますが、プリレーシングがあるとそれが防止できます。



この画像にはもう一つノウハウがあります。それは、これから引くストリングを手前に寄せておくということです。どのくらい寄せるかはストリングの種類とテンションによりますが、どんな場合でも多少は寄せるのが正解です。



これはテンションをかけるときのノウハウ。二本目を画像の奥に向かって機械がテンションをかけますが、このときに指三本の爪でストリングを保持して、ストリングの膨らみを防止します。つまり、引いている時点でクロスをまっすぐにするんです。

このようなことをしても、しょせん膨らむと思っているプロが多いようですが、それは仕事が速すぎるからです。このまま少し保持していると微小なノッチができて、ストリングが動かなくなります。つまり張ると同時に枡目が作れるのです。テニスのプロハリやレッドコートのようなポリ系の逃げるストリングでも、少し保持していると枡目が動かなくなります。

もしそれでも逃げるようなら、プリレーシングも積極的に手前に寄せておくという方法もあります。

「このまま少し保持している」については、プロはやりません。そんな丁寧な仕事をしていたら時間がかかって商売にならないからです。ほとんどのショップはざっくり張ってから最後にオウルで枡目を揃えています。しかし曲がったものをまっすぐにするのですから、必ずテンションが抜けてしまいます。またほんの少しのズレはノッチができて動かないので、完全な修正はできません。



引いたストリングはクランプしますが、その前にもう一仕事。ストリングを引いた方向と逆の方向に、指の腹でメインストリングをしごきます。

これはストリングを引いたときメインがクロスを引かれた方向にずれてしまうので、その歪みを開放してあげるためです。


テンション抜けのないストリンギングは、ここで時間をかけてじっくり目を作ることにつきます。

またここでゆっくりやることは、ストリングに十分にテンションをかけて、初期の延びを延ばしてしまう意味もあります。安い電動は、一度クラッチが切れるとさらに引き足すことはありしませんが、それでも時間がたつと一回引きなおしたり、クランプのときに引き足されたりします。これは一度引いて保持している間に、テンションが抜けることを意味します。

要は、アマチュアは時間には金がかからないので、ゆっくりやりましょうということです。目安としては、全部のクロスに30分。クロス1本に二分弱かけると非常に安定します。プロはその3〜4倍のスピードではりますが、時間をかけて安定させるのは時間の制約のないアマチュアの特権です。

ちなみにかないまるは、プロ並みとは行きませんが、その気になればラケット一本30分で張れます。でも30分でなんかでは絶対に張りません。ビールを飲みながら一時間かけるんです。それが打感を良くします。




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あとはそのまま単純に左右にはり、最後をタイオフします。



やり方はメインの最後と同じです。



最後に全体を見て、ストリングが曲がっているところがあればオウルでなおします。ただしここで大幅に直すようではたぶんダメなんでしょうね。クランプでつかんだ痕跡でどうしても曲がっている場合を直す程度となるようにします。つまり、張るときに頑張ります。



出来上がり。

これは目なおしを一切やっていません。張りながら気をつければ、張りっぱなしでこのくらいは綺麗にできますし、それがよい打感を得るコツです。



(この項、おわり)

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