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「音匠仕様」 が正式リリースされました


初稿080619
更新081230


みなさん、お待たせしました。「音匠仕様」のSA-CDの正式リリースです。

昨年私が藤田恵美さんのSA-CD制作のお手伝いを開始してから約1年が経ちました。できあがった「camomile Best Audio」では、ディスクに緑の特殊インク処理を施しました。この緑インクは高音質DVD-R「音匠」用に開発したもので、色素や添加物の配合が高度にチューニングされていて、最終音決めを品川のかないまるの試聴室で行なったものです。

もともとがDVD-R用の 「音匠仕様」をプレス盤のSA-CDへの応用するアイデアは、音匠インクの開発者であるソニー仙台TECの小林さんのサゼッションによるものです。恵美さんの作品はかないまるがSA-CD制作経験がなかったので、ディスクにしてどう音が変化するか把握するためにテストプレスを行ないました。そのときに音匠仕様も試したらマジで音がいい。

でもプレス盤への量産対応態勢などあるわけもなく、無理を言って採用してもらいました。ディスク製造部門には、当時のかないまるは超駄々っ子に見えたでしょう(^_^;)

おかげさまで発売されたcamomile Best Audioは5万枚という想像もしていなかった数が販売され、現在も売れ続けています。オーディオファイルのみなさんが高音質を求めてやまないことの証ですね。

それから半年。ディスク製造部門での量産受け入れ態勢が整ったそうです。これに伴いソニー・ミュージックエンタテインメントから、正式に「音匠仕様」をうたったハイブリッドSA-CDが5タイトル発売されることになりました。全て「CD+2chSACD+マルチチャンネルSACD」のハイブリッド盤。発売日は6月25日。一作品2,730円(税込)です。

作品は2000年から2002年にかけて、SA-CDを普及させる壮大なプロジェクトの中で制作されたものです。マルチチャンネル制作、DSD録音機など、このプロジェクトで完成したことは数しれません。予算規模もおおきなプロジェクトですので、一流アーティストの演奏が録音され、DSD制作はプロの現場でどんどん改良が加えられ:この時期に完成の域に達しました。

実は、camomile Best Audioの制作に使われたDSD録音機と編集システム「SONOMA」は、なんとこの5作品で使われたときの現物なんですよ。つまりこれらの5作品は、5年余の時を経ていますが、camomile Best Audioと同じ血が流れているというわけです。。

今回発売の5タイトルは、旧発でもその高音質が発揮されていましたが、音匠仕様でついに「録音現場の音」を聴くことができるようになったと思います。

今回の再発に当たっては、SA-CDのDSDデータや、CDレイヤーのPCMデータは一切加工されていませんから、旧作をお持ちの方は、非音匠と音匠仕様の違いを確認することが可能です。

なおCDショップで購入する場合は、旧作が残っている可能性がありますのでご注意ください。今回はジャケットに「音匠」の文字がありません。下記リンクでネットで購入するか、ショップでは「ハイブリッド仕様」または「税込み2,730円」をキーワードに購入してください。まあもし在庫があったら、比較用としてお宝かもしれませんが(^^;)

ちなみに旧作は全てCDとSA-CDが別々に発売されたシングルレイヤー盤でしたが、今回はCD/SA-CDのハイブリッド盤です。


では5作品をご紹介しましょう。

SB080621-1
---特選・ジャズ・音匠仕様SACD(CDハイブリッド)---
---[NEW] 080621---


バードランド(ステレオ&マルチチャンネル)
M.Sasaji & L.A.Allstars

2000年リリースの超有名盤です。SJ誌のゴールドディスクにも選定された名演奏で、オーディオマニアならかなりの方が所有しているのではないでしょうか。まず2チャンネルCDでリリースされ、ついでSA-CDシングルレイヤーで発売されています。たしか2チャンネルのSA-CDもあったかも。3回買ったかたもいらっしゃるでしょうね。さあ、4回目ですよん(^_^;)

内容は笹路正徳のアレンジによるビッグバンドジャズ作品で、LAの超一流セッションマンと元Mr.Misterのリチャード・ページがヴォーカルに参加しています。この人たち演奏がすごくいいですし、アレンジもなかなか。ビッグバンドジャズというとちょっと古くさい感じがしますが、これは違います。かっこいい。

2000年リリースのこの作品はそもそも非常に有名なもの。ジャズやポップスのマルチチャンネルの優秀録音は少ないんですが、本作は高い評価をする人が多い録音です。マルチチャンネルの使い方も2チャンネルベースで、無理矢理音を後ろに持ってくるのではなくてたくさんの空気を録って空間を構築する感じ。かないまるも旧作をもっていて、そのへんはよく知っていたつもり。

しかし今回の「音匠仕様」盤と聴きくらべて、その自然な音に「うわ、今までのはなによ!」という気持ちをまず持ちました。オリジナル録音時から手がけたソニー・ミュージックエンタテインメントの椿さんら制作のプロの方々数名と一緒に聴きましたが、「うわ、すっげー」というだけで、誰からも細かい音質比較の言葉が口から出ない。それほどいいんです。

ではどういいかというと、ディスク臭くないて柔らかくしなやかというか、まずとてもみずみずしいのです。音空間は透明で広く、音と音のスキマがちゃんとあります。スキマは無音ではありません。気配がただよっているんです。

ビックバンドはたくさんのブラスが一斉に音を出す瞬間があります。ここが旧発ではシステムによってはダンゴになりやすかった。それが全部の音をシャワーのようにぱーんと浴びることができます。ブラスの炸裂って気持ちいいですね。鮮度の高さ、音数の多さに圧倒されます。まさにモニタールームの音が聴けるという感じでしょうか。

特選です。


SB080621-2
---特選・ジャズ・音匠仕様SACD(CDハイブリッド)---
---[NEW] 080621---


アフロ・ブルー(ステレオ&マルチチャンネル)
M.Sasaji & L.A.Allstars

前作の第二弾として制作されたものです。前作同様LAのセッションメンに加えて、ヴォーカルに元TOTOのジョセフ・ウィリアムスが参加しています。2002年作品。

第一作との違いは、会場に人が居ること。録音現場はLAのキャピトルスタジオですが、関係者や知り合いを中心に約100人の観客を入れて、ジャズ・クラブの雰囲気にしてライブ録音したそうです。なのでサラウンド側のプレゼンスがすごくいい。スゴイ雰囲気感。一作目のサラウンド空間には空気が詰まっていましたが、二作目は人が詰まっている?。

旧発との音の比較では、やはりまずそのプレゼンスに格段の違いがあります。1曲目のコルトレーン作品がはじまるその前、つまり冒頭の拍手が出ると同時に「あ、空気が全然ちがう」。そう、カラっとしたロスの空気が聴こえるんです。でありながら、観客にかなり日本人がいることがわかったります。「DSD録音って本当にすごいんだなあ」と思わせる音。

演奏は前作同様かっこいい。鮮度が高く、分解能と情報量が多く、それでいて全く硬さの無い音が演奏の立体感をリスリングに再現してくれます。

とにかく空間が澄んでいます。そこにビッグバンドジャズが炸裂します。ジャズ好きにもオーディオ好きにも推薦できます。


SB080621-3
---推薦・ポピュラー・音匠仕様SACD(CDハイブリッド)---
---[NEW] 080621---


THE MAN WITH THE GUITAR
-recorded at LIVETERIA-
(ステレオ&マルチチャンネル)
高中正義

2001年に「高中正義芸能生活30周年記念ライヴ」というのが行われたそうです。このSA-CDは、そのライブのリハーサルを一連のセッションとして演奏してもらい、DSD機材を持ち込んでスタジオライヴ収録したものです。サポートメンバーは後藤次利、斎藤ノブ、山木秀夫ら。

かないまるはこの盤の発売当時はTA-VA555ESを設計していましたが、旧発売盤でははっきりいって何がよいのかよくわかりませんでした。普通の音量では迫力がないし、音量を上げるとうるさい。それは、こういったポップ系、ロック系の音楽をディスクでHi-Fi再生する難しさでもありました。

でも「音匠仕様」で答えが出ました。この演奏は、やはり「ステージライブ」のリハーサルセッションなんです。

音量を上げないと聴こえてこない音があります。そして「音匠仕様」なら音量を上げられます。上げれば上げるほどいい感じ。高中のギターがもう濡れるような美音になって聴こえます。

そして最初は大きな音でばかり聴いていましたが、じつは音量が小さくてもいろいろな音が入っていて楽しめることがわかりました。念入デザインした立体音というのではなく、どちらかというと素朴な生音が生きています。これも音匠仕様の効果ですね。



SB080621-4
---推薦・ポピュラー・音匠仕様SACD(CDハイブリッド)---
---[NEW] 080621---


バリ・ガムラン・ミュージック
〜スローライフへの誘い

「音が周りを取り囲む系サラウンド」の権化。ガムランが周りを取り囲む。いやー、はじめて聴いたときはびっくりしたものです。これも超有名盤で、音楽ファンよりはオーディオファンのほうが所有率が高いでしょう。もし持っていたら、もう絶対「音匠仕様」を買ってみましょう。音匠仕様のオーディオ的すごさがダイレクトにわかると思います。

演奏場所はジャケット裏面に写っている寺院の中庭。つまり屋外です。なので旧作品を聴いたときは、妙にドライな楽器に取り囲まれる収録に「うわー、なんだこりゃ」というのが正直なところでした。

ところが音匠仕様では、まず楽器一つ一つが生き生きとして、「取り囲まれる」というより「周りに楽器が居る」という感じに一変します。またおそらく寺院などの建物から来る初期反射が聴こえるからでしょうか、楽器ごとにそれぞれの距離感がわかります。

この録音はいわゆるガムランという楽器群の演奏のほか、ケチャというお経のような人の声だけで構成される音楽で組み立てられていますが、ケチャの迫力も相当なものです。

この録音のためにバリ島に持ち込まれたDSD機材は0.5トン。全部飛行機で運んだそうです。すごいなあ。いくらかかったんだろう。

ガムランの好きな人、オーディオマニアには特選。



SB080621-5
---特選・ポピュラー・音匠仕様SACD(CDハイブリッド)---
---[NEW] 080621---


ALL NIGHT WRONG
(ステレオ&マルチチャンネル)
アラン・ホールズワース

これ、スゴイです。もともととても好きな盤で、かないまる的にも「音匠仕様」化に大感謝。全ての方に特選です。

ギターの巨匠アランホールズワース。その彼が六本木ピットインで行った日本公演のライブ記録。ギター演奏にこもった感情はものすごく、旧発売のSA-CDと全く同じマスターデータで作られたとは信じがたいダイナミックな音がしています。

実は今回の再発の試聴中に、SMEの椿さんにすごいことを教えていただきました。それは、実はこのライブ録音は、当時ピットインの6階にミクシングルームがあり、そこで演奏と同時にダイレクトミックスされたのだそうです。

あー、なるほどなあ。

そうなんです。後からミックスしたのではこうならないと思うんです。それはステージの熱気と会場の空気の融合なんです。旧作では、それはそんなに感じませんでした。なぜなら普通のSA-CDはなかなかミックス時の音がするものではないからです。CDの素材であるボリカーボネイトの音が載るんです。

優秀なマスタリングエンジニアはそれを見越した音作りもするでしょう。でもピットインでのダイレクトミックス。その時そんなことは絶対に考えていないはずです。とにかくそこでよい音を出そうと万全をつくしたと思います。

そして音匠仕様から出てくる音。「あー、ミックスのときは、まさにこの音がしていたんだろうなあ」という確信が持てるんです。この感覚は5作品全てから共通して感じ取れましたが、この盤は特別にスゴイです。

とにかく、スタジオではない六本木ピットインでの収録がなぜこんなに完成度が高いのか。聴きながら感想をつぶやくかないまるに、ソニー・ミュージックエンタテインメントの椿さんが秘密を明かしてくださいました。そうだったんですね。

超特選です。できれば会場で聴くような大きな音量で再生してください。音匠SA-CDならピットインが再現できることでしょう。

作品紹介と音質インプレッションは以上です。



CD層も、単盤CDより音がよかった

以上の音質評価は、主にSA-CDのマルチチャンネルレイヤーによるものです。しかし今回の再発をCDとして購入したいという方もいらっしゃるでしょう。

そこで今回は、旧作品の単盤CD (SA-CD層を持たない純粋CD) を用意して、音匠仕様のSA-CDのCD層との比較も行いました。

その結果、音匠仕様のSA-CD層は、単盤のCDより音質がよいことがわかりました。音質傾向はSA-CD同志の傾向と同じで、みずみずしくキレ、情報密度がよく、パワー感があり、そして音楽的です。


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