USRSAノット


初稿 111204
更新 120630
改定 130427
「いわゆるUSRSAノット」の出展が判明じつしたので、前面的に書き換えました。


ストリンギングについてネットで調べていると、「Stringer's Digestで勉強した」という記載が結構出てきます。バイブルのような存在?。

で、2011年に世界最大のオークションeBayを見ていたら「USRSA Stringer's Digest Spring/Summer 2010」の中古が出ていました。お、これかな?、ということで早速落札。



買ってみたらどうも様子がおかしい。勉強になるような記事がほとんどありません。うわさの「T2000の張り方」はありません。そもそもまるでラケットのストリングパターンのデータブックです。ノットの記載はありしたか、イメージがかなり違います。

そこでさらに調べたところ、15年以上前に「USRSAの日本支部」というのが存在し、「The Stringer's Digest 1993〜1994」というものをそこで作ったということがわかりました。これがバイブル化している本のようです。



これです。今でもこちらで入手できることがわかり、早速取りよせました。両者のノットの既述をくらべると、大筋では同じですが、若干の違いがありました。

まずどちらの版も、タイオフノットとスターティングノットをはっきりわけています。フィッシャーマンズノットはスターティングノットとして収録されています。フィッシャーマンズノットはフレーム側からの張力で締まるノットなのでこれは合理的です。

スターティングは別項に譲り、本項ではタイオフノットについてこの本に載っているものをご紹介しましょう。

1)USRSA標準ノット



まずこれが、ノットの一番最初に載っている「Standard Tie-Off Knot (標準のタイオフノット)」です。新旧両方の版で標準とされていています。



実際にやってみましたが、非常にしっかりしたノットになりました。ノットの強度自体はダブルノットのほうが強いと思いますが、ダブルノットはノットが大きく見た目を気にする人もいるでしょう。USRSAノットが小粒に出来るので、その点で好む人もいると思います。


2)USRSAバリエーションノット
(ストリングを切るとはずれる便利なノット)



次に、これが「Variation of Standard Tie-Off Knot (スンダードノットのバリエーション)」です。二個目のループを青のメイン (本ではアンカーラインと呼んでいます) をくぐらせるときに、標準では一個目のループの先で通しますが、これを一個目のループの中で通します。




USRSAバリエーションを実際に結んだ様子です。他の優秀なノット同様、非常に強固で、なおかつグロメットにやさしいノットです。

ところがこのノットには、他のノットにはないものすごく面白い特長があります。

それは、フレーム側からのストリングの張力がなくなると (つまりガットを外すと) をノットがはずれるということです。上図で「フレーム側の赤線を切る」ことを想像してみてください。赤線は青線に二回巻きついているだけになりますね。もはやノットではないのです。

このためこのノットは「ストリングを外しやすい」というものすごく大きな利点があります。またメインを残してクロスだけ張り替えて、ハイブリッドを楽しむ」「二本張りのクロスだけ張り替えてテンションを微調整する」なんていう遊びをしやすいノットです。

3)旧版のUSRSAノット

さて、上図のB部の上下を入れ換えると「The Stringer's Digest 1993〜1994」に載っている「USRSAノット」になります。



これが旧版のスキャンです。この本で勉強したストリンガーさんは「このノットこそがUSRSAノット」と認識していると思います。でも手間がほぼ同じパーネルノットのほうが性能は高いと思います。新版から消えたのもそういうことではないでしょうか。


4)ふたたび「いわゆるエイトノット」を考える

この本には、日本で普通に使われている「いわゆるエイトノット」は登場しません。真のエイトノットは単独ダンゴのスターティングノットして登場していますが、アンカー(メイン)に巻き付けるノットとしては紹介されていません。「いわゆるエイトノット」は、やはり世界的にみて非常におかしなノットだと思います。


5)敬意表明

「The Stringer's Digest 1993〜1994」は日本語版ですが、非常に苦労して翻訳したのが歴然と見て取れます。ここに最大の敬意を表したいと思います。

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