本家・かないルーム





10)リビングなどでのスピーカーのセットアップ
200223
200306更新

#リビングのスピーカーセットアップ
#ELAC 310.2
#反射音
#音場、拡散
#定在波
#1/4の定理、2.6メートルの定理

リビングなどで、比較的反射、残響が多く、また前壁(スピーカ背後)の壁までの距離が余りとれない場合のセットアップのノウハウについて書きます。

かないまるは仕事では、徹底的に残響を処理した試聴環境をつかっていました。「一般環境と違うではないか」とよくそう言われました。でも設計には必用な環境です。なぜなら反射音は周波数に凹凸を作ってしまうからです。どうしてもそれと凹凸関係の音を作ってしまいます。

かないまるがこのことに気づいたのはアンプのデモで海外に出始めたときです。デモ環境によりあまりに音が違う。その場でチューンしますが、設計で再現するととんでもない音がする。誰が使っても使いやすい音にするには、ニュートラルな環境が必用。

その後AVアンプの仕事をはじめましたが、そのとき試聴室をもらったので、反射音をカーテンで処理しました。すぐに「仕事がしやすい」と感じました。

試聴室に見えたお客さまで「こんなに吸音していいのか。残響はある程度あったほうが楽しいからおかしいのでは」という人もいました。しかし音を聴いてびっくりするのがふつうです。とてもリッチだからです。

これは吸音を誤解しているのです。基本的に強い反射は吸音します。天井からの反射は基本的に有害なので徹底的に取ります。でも柔らかい間接音は残すのです。そのためにカーテンの音質はとても大事ですが、いいカーテンで反射をバランス良く残すと、むしろソフト制作者の意図がとてもよくわかるようになります。なので、カーテンの選定は腕の見せ所になります。

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と、仕事の話をしたところで、では自宅リビングはどうするか。実際問題としてリスニング専用ではないので、つよい吸音は難しいです。つまりふつうのリビングの残響時間の中でどうやるか。

この調整は退職してリビングでオーディオをやると決めたからゆっくりやるつもりでしたが、エッジの破損を接着で修理した310.2JETがわりと鳴りがいいので、いったんホンキでセットアップをすることにしました。
    このセットアップは前項のユキムでの修理の前に行ないましたが、その後ユニットをもとに戻したので、20年3月現在もこの状態です。

---1/4の定理---
まずスピーカーの置き場所。1/4の定理をご紹介します。部屋の横幅の1/4を狙って配置するのです。これはかないまるが残響が処理できない海外デモを繰り返す中で掴んだ方法論のひとつです。先日の画像はほんとに暫定な配置でしたが、今回はこの定理によりスピーカはリビングの左右の壁間隔のほぼ1/4の位置に置き直しました。



ではなぜ1/4か。

それは、この位置が部屋の定在波を励起しにくいからです。低音がブーミーになりにくいんです。310.2のような小型で低音が出るスピーカーは置き場所がシビアですが、それは定在波の励起がピンポイントて、共振が明確だからです。小型スピーカーで低音をしっかり出しすぎると辛口の評価が出る。310.2もそういうインプレッションが目立ちましたが、それはテスターさんの使い方 (取材時のセットアップ技術) にも問題がありそうです。

また部屋の1/4に接地すると、左右の壁からの距離もとれてきます。実は左右の壁からの反射はステレオイメージの大敵。海外では部屋を横に使う人がおおいですが、それは横壁からの反射が有害であることを知っているからです。日本は部屋が小さいのでスピーカーからの距離をとろうとして前後を長手に使いがちですが、イギリスなんかも狭いといえば狭くて、そういうところでも部屋を横に使う人は多いようです。


---2.6メートルの定理と現実---

次は前壁からの距離。デモや試聴室なら金井さんは壁から2.6メートル程度の距離をとります。これはもう経験則でしかないんですが、いい音がします。

この距離は前壁からの反射音が15m秒程度とれる位置になります。人間の聴感は、15ミリ秒以上の反射音は元の音と分離するという効果です。人種によらず万国共通のようなんですが、でこのへんでガラっと音が変わります。なので、この辺にたいへん音を豊かにする場所が存在します。かないまるはデモではそれをよ利用しますが、この見解を文字にするのはこれが初出です


---拡散トラップ---

しかし今回はリビングなので、壁からの距離2.6メートルなんて取れるわけがありません。ないので、別の作戦を使います。それはスピーカーの横に本棚を配置してあることです。

これは拡散トラップとして機能します。スピーカーから横に出て後ろに回り込むまえに、音を本棚でトラップして、そに飛び込んだ音が反射して出てくるまでに複雑な反射をして、反射波が分散し、かつ出てくるのが遅くなることを狙っています。この工夫も文献で呼んだことがないので初出だと思います

    読者から「本を床から平積みしてあるが、これは有効か」という質問をいただきましたが、それはだめです。
    トラップになる棚板や本は基本的に上下に立っていることに意味があります。
    トラップした音を水平に拡散するには、拡散物は上下に立っているのがいいのです。
    平積みは音をつまらなくする無計画な吸音材になりやすいので整理整頓しましょう。

この効果は、会社ではサラウンドスピーカの配置で実施しました。有名な「金井ルーム」の画像には、サラウンドスピーカの近くにソフトウエアのラックが近接しておいてあるのが写っているのがありましたが、これもかないまる流です。いままで黙っていましたが、これに気づいている同僚がいたら褒めてあげます(いないと思いますけど)。

今回はリビングなので、フロント壁からの反射の処理に応用してみました。つまりフロントに本棚とスタンド付きスピーカを混在させるのですが、結果はなかなかよいです。

で、ここまで追い込んだ結果、出てきた音と音場は非常にまともで、音楽を楽しむにはかなりいいバランスだと思います。(仕事に使うには、もう少し反射音を処理しないと難しいかな)。ですのでユニットの接着修理はうまく行ったと判断しました。

(2020/01末ごろ撮影)

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