プロロジック2とはなんでしょう



初稿021223


・プロロジック2とは

以上のように、マトリクス/ステアリング処理は、2チャンネルしかない記録チャンネルで4チャンネルの上映ができるということで、10年以上にわたり映画音声の主流をしめていました。

マルチチャンネルが主流となった現在でも、マトリクス処理された2チャンネルのトラックは必ずフィルムに記録されます。現在でも設備が古い映画館では、ドルビーSRシステムで4チャンネル上映されるほか、デジタル音声が途切れた時に音をすり替えるため、ドルビーSRシステムは常時動作しているのです。

またマルチチャンネルで制作された映画はDVDではマルチチャンネルのまま提供されますが、VTRで市販やレンタルに供される場合は、やはり同様の処理がなされます。

ここでマルチチャンネルが一般化して来ると、プロロジックの立体感がもう少しどうにかならないかという欲求が出てきます。

そこで登場したのがプロロジック2、DTSネオなどの、サラウンド側を2チャンネル以上に拡張したステアリングですが、ここではプロロジック2を説明します。

・動作原理図



これがプロロジック2の原理図です。プロロジックとちがうのは、サラウンド信号がSL/SRの2チャンネルになっていることです。

ではその音源はというと、実はプロロジックと同じ一個のSです。

以前のプロロジックでは、たとえ再生するスピーカが左右二個あっても(映画館ではもっとたくさんありますが)、そこから出てくる音は、常に単一の同じ音、つまりモノラルのSでした。

プロロジック2では、このSをSL/SRに分配する時に、別々の可変利得を通して、SL/SRの間の任意の位置に定位できるようにしています。このためサラウンドに方向感を作り出すことができます。

・どうやってステアする?

このSをSL/SRに配分する仕事もステアリングですが、どこからそのステア情報をとるのでしょうか。

これはどうやらフロントのL/Rの音量配分を利用してステアしているようです。

現在の映画は、まずマルチチャンネルで作られてから、もともとのSL/SRを加算してSを作っています。しかしもともとのSL/SRは単独に音を入れてあることはマレで、たいがいフロントのL/Rと音を混ぜて使われています。

したがってサラウンドの音が右側にいる時は、たいがいRにも何らかの音が混ぜてあるし、左にいる時はLにも何らかの音があることが多いといえます。

したがって、フロントの音量配分を利用してSをステアすると、かなり自然な音場が現れるというわけです。

実際、プロロジック2を利用してプロロジック用の映画を見ると、結構立体的で楽しめます。

また、Sを作るところまでは、ほぼプロロジックと同じシステムなので、動特性的に破綻することが少ないようで、聴いていて大きな違和感を感ずることはないようです。

・これはデコーダでしょうか??

プロロジック2は、ドルビーが作ったものであるため、専用にエンコードされた作品があるように思われがちですが、そういうものはありません。あくまでプロロジック用に作られた映画を、再生側で拡張して楽しむものです。実際ダビングシアターにはプロロジック2用のエンコーダというものはありませんし、今後も導入されることはありません。

したがって、ステアリングがとんでもない動作をすることが無いとはいえません。気をつけて聴いているとサラウンドの音が神経質にフラフラと動いてしまうこともあります。

もしミキサーさんが聴いていれば、そしてそれが作品としてまずいと判断すれば、きっと修正するだろうというような動きをすることがあるわけです。しかしそこは出たとこ勝負。そんなことはお構いなしなわけです。

つまりこのシステムは、エンコード/デコードの関係にはありません。プロロジック用に作られた音源を利用して映画をより楽しむための、ドルビー製創作音場システムの一種、とはっきりと理解しておく必要があります。

ではその上で使えるか使えないかというと、これはもう実によくできたシステムだといえるでしょうね。うるさいことを言わなければ、結構楽しめるシステムです。

実際私自身も、音源が2チャンネルしか無い場合は、プロロジックよりはプロロジック2を使うことが多くなっています。

・音楽モードは?

プロロジック2には音楽モードがあり、CDなどの音楽が対象です。これについてはプロロジックのような別システムとはいえ、S分を豊富に生成するようにエンコードをされた音源を相手にするわけではありませんので、まあ、それなりに楽しむ物だと思います。

・DTSネオ6は?

これはプロロジック2と同様にステアリングを拡張して映画やCDを6チャンネル化するものです。プロロジック2とどちらがよいかは私にはわかりませんが、多くのモデルでプロロジック2とネオ6の両方が実装されているのが普通なので、ユーザ自身が確認して使えばよいと思います。



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