水練りで打ちましょう




更新 031005
初稿 020118


生粉打ちは、水練りと湯練りに分かれます。湯練りは、熱湯を加えることでそば粉を糊にして、主にその糊でそば粉をつなぎます。

一方水練りは、そば粉に含まれる水溶性タンパク質の粘性と水自身の粘性で粉体に結合力を発生させてつなぎます。

一般的には湯練りのほうがやさしく、水練りは難しいとされています。本当でしょうか。

結論からいうとこれはまちがいです

まずつながるつながらないの話でいえば、水練りで必ずつながります。タンパク質が少なく、上級者向けとされている高山製粉の「白樺」ですら、当WEBに書いてあるとおりに打てば、ほとんど初めての方でもつながります。私自身は現在のところ「水でつながらないそば粉」には出会ったことがありません。ほとんど澱粉だけで構成される「御膳粉」ですら、水だけでつなぐことができます。ましてタンパク質の多い普通のそば粉は、どなたが打っても、おそらく必ずつながります。

次に加水の安定性を考えると、これはもう圧倒的に水練りの勝利です。

なぜなら、湯練りは、まず湯の温度と計量の安定性に欠けます。ちゃんと計量できても水分の蒸発が速いため加水率が不安定になります。もっといやなのが、適正加水率に達した瞬間を見極めにくいことです。適正加水率に達しても、加水直後はまだパサパサしているのが普通で、どこで加水をやめるべきか、初心者にはとても難しいのです。

これに対して水練りは、まず熱湯を用意する必要がないので手軽です。これは私個人は最も重視しています。とにかく楽。

次に、蒸発量が少ないので、あらかじめ計量をきちんとしておけば、かなり安定した加水率を狙えます。たとえ失敗しても、次回は修正が効きます。

また、水練りは「加水するにつれて次第に粘りが強くなり、粉が勝手に集合したときが基本的な適正加水率」なので、加水打ち切りの見極めも比較的簡単です。もちろん蕎麦粉の個性に合わせた加水はその前後にあることもありますが、それはいったんつながってから修正することで、そのための基準加水率も見いだしやすいのが水練りです。

茹で時間の点でも有利です。湯練りは打ち上がった段階で半分茹だっているようなものです。なので麺を湯に投じてから最短の場合10秒以下で茹であがります。ところが同じそば粉が、熱湯の温度や粉を攪拌する技術の稚拙により20秒以上にもなったりします。茹で時間は麺の太さでも変わりますから、こうなると要素が多すぎて、初心者が適切な茹で時間を見いだすのは困難です。

ところが水練りは、標準的な太さで30〜40秒程度と比較的長めです。もちろんそば粉によっては細めに打つと15秒以下になることもありますが、湯練りよりは安定なので落ち着いて茹でることができます。

このように、数々の理由から、水練りで打つことは、実は意外に楽なのです。驚くべきことに、ほとんどの指南書がこの点を指摘していません。

加えて水練りは腰が強くて美味しいという美点も持っています。湯練りは水練りにのようなしなやかで強い腰をなかなか獲得できません。歯ごたえ、のど越しなど、そばを食べる喜びにおいても水練りに軍配があがるのです。

このように、水練り (水ごね)はいいことだらけです。


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