==古川製粉所製==
特上印粗挽きそば粉(3)
更新020820
初稿020810
では、特上印 粗挽きそば粉の感想です。
まず驚かされたのは、加水率の低さです。50%以下という加水率は、石臼挽きそば粉では異例ではないでしょうか。粉の感触がしっとりしていますので、もともとの蕎麦の実の含水率が多めなのかもしれません。
このため、いつもの私のまとめかたでは、ほんのわずかずる玉になってしまいます。玉にまとめたあとのそば粉の吸水があまりないからですね。
胡桃亭だとかなり粗いので、相当にびしょびしょにしないと玉になりませんが、そのあと粉が水を吸って湿気が引くので辻褄が合ってしまいます。私が胡桃亭を難なくつなぐことができたのは、私のまとめかたと胡桃亭のこの特性が偶然一致したから、というのが現在の私の解釈。
胡桃亭は極端ですが、細挽きであっても石臼挽きは多分にそういう感じがあります。つまり、ほんのわずかずる玉でまとまったあと菊ねりで締まる(ただし手早く打つことが絶対に必要)。
これに対して今回の粉は、まとめてから締まる感じがほとんどありませんでした。つまりゴロゴロと転がして、自然にまとまるまで加水する私の通常のやり方ではやや加水過多になってしまうようです。特に今回は撮影しながらなので、加水中に手を止めることも影響しているでしょう。次回はもっと手早く打ち、なおかつ少し加水を少なめにして、加圧してまとめる感じにしてみようと思います。
さて、次に食感ですが、特長はなんといっても香りと甘味が非常に強いことだと思いました。特に香りは胡桃亭以上ですね。甘味もなかなか強く、このへんは粗挽きらしい特質だと思います(ただしここでいう胡桃亭とは、分けていただける粉で自分で打ったもののことで、胡桃亭のお店の味のことではありませんので念のため)。
またこの甘味は、少し茹で時間を短くしたほうが強いようでした。さらに冷水でかなり締めても甘さが引きません。前のページにも書きましたが、これには大変にびっくりしました。
つまり、甘味は引くんだが、それでもまだ強い甘味が残っている、ということかな。したがって冷水で思いっきり締めることができますが、私はキリキリに締めたそばの歯触りがすきなので、これはもうたまりません(^^;)。
しかしこのそば、いったいどこ産なんでしょうね。産地がわかりませんが、私はそば打ちを始めたころ、もっぱら群馬県秋塚というところの蕎麦を打っていました。今から思うとつながりにくいそば粉でしたが、基本的に味はよくて、氷水で締め上げても甘味が残るこの感じもよく似ていました。実は最近の秋塚産は品種が変わったのか味が変わってしまいましたが、なんだか懐かしい味に再開したような気持ちです。本州産なんでしょうかね。
最後にそば湯。これは絶品でした。今回延ばしすぎたので生地の両端を落とした部分。麺を切った時に残る生地の端の部分、延し板に残った打粉とあわせてボウルに入れて、簡単に揉みほぐしたあと水を少し入れて水溶きしておきます。いったん練った生地を崩して少量の水で膨潤させておく感じ。これを蕎麦を食べる前にやっておき、蕎麦を食べ終わったらころに茹で湯で割ってそば湯にするのが最近の私流です。
胡桃亭もこの作り方のそば湯は美味しいですが、さすがに粒子がでか過ぎて舌に触ります。しかしこの特上印粗挽きそば粉だとザラつき感はまったくなく、ふっくらとして甘くて味が濃くてとても美味しいそば湯となりました。これはまさにそば湯の逸品といえるかも。
むふふ。このそば粉、なかなか美味しいです。
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後日談(2002/8/20追記)
義理の父親の依頼で、二日連続で各晩に4人づつ、合計8人にそばをお出ししました。選んだそば粉は、高山製粉の白樺と、古川製粉の特上印粗挽きそば粉で、二晩とも各粉を500グラムずつ。合計2キロ打ちました。本職にはなんでもない量でしょうけど、私は素人だし、まして客人にお出しするなんて。ひぇ〜。
白樺は打ちなれたそば粉ですが、特上印粗挽きは今回が多めに打つはじめての機会です。
その結果、特上印粗挽きの加水率は46%強と定まりました。かなりの低加水率ですね。また白樺、粗挽きともに、今回秘儀四角玉延ばしで延ばしましたが、この大きさの玉でもなんとか延ばすことができました。ただこの大きさだとゆがみを矯正するノウハウが要りますね。このノウハウは近々公開しますが、普通の人は角だししたほうが楽かな。
茹で時間は、約10リットルのアルミ鍋で二食分ずつ茹でて、白樺が40秒弱、粗挽きが30秒強でした。どうも硬めの食感が好きそうな方々なので、氷でキシキシに締めてから、常温水でさっと表面を温めてお出ししました。太さは、白樺はきりべら20程度。粗挽きは23程度にしました。
さて、興味深かったのは白樺と特上印の味の評価ですが、結果としては大きな優劣はつけがたかったようです。いままで黒っぽいそば粉と白樺を並べて出すと、たいがいは白樺が圧倒的優位に立つんですが今回はそんなはっきりした差はつきませんでした。
これが粗挽きの威力なのか特上印の玄蕎麦の力なのか、はたまた古川製粉の仕事がよいのかわかりませんが(多分全部でしょう)、私として定番のそば粉がひとつ増えたなという感じです。
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