高山製粉の「縄文そば粉」(4)
適正加水率についてなど


更新030713
初稿030521


1.縄文が歯ぬかり??

「縄文」について「歯ぬかりする」という記載がネット上にあるようですね。高山製粉さんから「どう思いますか」という問い合わせが入りました。

で、基本的にはa9〜a11に書いたとおり、私はこのそば粉に歯ぬかりは感じません。外層を多めに挽き込んだそば粉は、エグミがあったり歯ぬかり感をともないやすいとは思いますが、縄文にはそんなことはありませんでした。

2.原因を推理する

そこで、なぜ「歯ぬかりする」という感想が出てくるのかを考えてみます。全層粉を生粉打ちして「歯ぬかりする」場合、その原因は、

1)そば粉自体がつながりを重視しすぎて外層を挽き込みすぎている
2)加水率が高過ぎる
3)水まわしが下手で、水分の多い部分がある

以上のケースが考えられます。

3)は通常は深く論じませんが、縄文の場合はかなり粘りが強いので、初心者はやってしまうかもしれません。菊ねりが上手でない場合も起こるでしょう。

また1)のケースはそば粉そのものの問題です。かなり加水率を下げても歯ぬかり感が避けられないそば粉に出会ったことは私もありますが、縄文はそういう粉ではありません。

そこでここでは、2)のケースを中心に考えてみます。

3.加水率範囲の調査

そこで、最新の縄文を取り寄せて、多加水状態で打つととどうなるか調べることにしました (今回使った縄文は5月17日に挽かれて発送されたもので、これを5月18日に打ち、その後一カ月程度の間に何回か追試しています)。

また同時に加水率の低い方の範囲も調べることにしました。


3.1.通常水まわし

まず、いつもどおり蕎麦粉と対話しながら打って、そば粉がほしいだけ水を加えて上げると、やはり45%弱でまとまりました。私はこれをやや太めに切っています。

高山製粉さんは恒温恒湿の倉庫を使っているそうで、加水率の変動は少ないのですが、縄文も例外ではないようです。

3.2.多加水

つぎに多加水ですが、まず47%で水まわし。かなり緩くなりましたがそばにはなりましたし、二八の練り感にはむしろ近いかもしれません。

限界は48%。49%では、木鉢の中ではなんとか括ることはできましたが、練ろうとするとネバネバになり、生地にはできませんでした。


3.3.少加水

つぎに少加水ですが、39%くらいから少しずつ加水を増やしてみた結果、41%から括ることができました。42%は少し力を入れると硬めの生地になり、43%はある意味適正範囲かもしれません。

3.4.加水率範囲

というわけで、41%から48%が縄文を括ることができる範囲だと結論づけられます。中心から上下3%以上というのは、かなり許容範囲が広いと思います。

4.食感はどうであったか

では加水率と食感の関係です。加水率の限界調査時に同時に味見したのと、その後の追試した結果です。

まず縄文の切りかたのお勧めはやや太めにすることですが、この場合は44〜45%が一番美味しいと思います。私がいつも食べているのはこのへん。しっかりした歯触りと旨み、香りのバランスがよいところだと思います。

ただし、きりべら23の標準太さでは、44〜45%ではやや歯ごたえが足りません。42〜43%程度が美味しくなると思います。この太さはが好きな方は43%前後を狙うといいと思います。

つぎに上限と下限の風味ですが、48%は麺になっているというだけでおいしくありません。

47%前後まで下げると最初の噛み応えに弾力感があり、また味も濃く感じられ、その意味ではよい面があると思います。しかし、最後の噛み切りのところで歯に少し重い感じがします。うるさい人なら歯ぬかりと言うでしょうね。

また47%によい面を感ずるのは、やや厚めに延ばして太めに切った場合に限りいえることです。47%に加水すると生地ののびが非常によく感じられますが、調子に乗って延ばしすぎて細めんにしてしまうと全然噛み応えのない味気ないものになってしまいます。

では41%はどんなそばだったか。これは硬過ぎました。硬いのが好きな私でもこれはちょっと硬すぎ。硬いだけではなくて、香りや味も後退してしまいます。

標準太さに切って美味しいのは、43%前後ですね。

5.まとめ

以上、縄文がかなり広い範囲の加水率で生粉打ちでつながることがわかりましたが、美味しいのは43%〜45%です。標準太さなら43%。太麺で45%。

加水率の上限は47〜48%で、よい面もあるが歯ぬかり感もありました。

ここで普段二八で打っている方は注意していただきたいのが、この上限付近の加水です。多くの方が二八でまず蕎麦打ちを練習なさると思いますが、二八に慣れた人が、生粉打ちを二八と同じ練り感に加水してしまうと、生粉打ちではそれは、基本的には加水しすぎです。

生粉打ちはグルテンによるのびがありませんから、練り感が二八と全然違いやや硬いのが普通です。ところが縄文のような全層粉を多加水にすると二八の練り感に似てきます (本質的には違うものですが)。「生粉打ちは歯ぬかりする」というよくある意見は、そんな加水に原因がありそうですが、今回の「縄文が歯ぬかり」云々も、これが原因かもしれません。

では逆に加水率が低過ぎるとどうなるかですが、味がなくて硬いだけ。つまりゴムヒモ状態になってしまいます。

まあ、蕎麦は好みですからね。好みに合わせた蕎麦にするために硬さを振ること自体は悪いことではありません。縄文を二八にするのもなかなか美味しいものではあります。

でも、生粉打ちなら、まずは44〜45%で加水して太め、あるいは43前後で加水して標準太さに切ってみてください (梅雨時は1%程度低めになることもお忘れなく)。

6.切り後の寝かし

追記ですが、縄文は切ってから最低1時間は寝かしてください。一般的に「切り立てより、切ってからすこし寝かした方が美味しい」という件はコラムにも書いてありますし、私の試食はおおむねそうしています。しかし、縄文はその変化が大きいようです。

縄文を打ったある方から「切ってから半日放置したら別物のようにおいしかった」というメールをいただきました。試してみたらたしかに変化が大きい。やや加水率を下げておいて寝かすと、たしかに別物のようです。

いやあ、おもしろい粉です、縄文は。


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