小型親指携帯PC LOOX S9/70 試用記




030317 公開  


@niftyのパソコン通信のフォーラムFOAU1は私の常駐フォーラムですが、ここの6番会議室の企画で、親指シフトキーボードを持つ携帯PC、 FMV−BIBLO LOOX S9/70(FMVLS970S)を試用させていただきました。関係者には感謝いたします。

詳しくはフォーラムに感想を書きましたが、せっかくですのでこちらもインプレッションを記しておきたいと思います。




1. PCとしてのインプレッション

1.1. 全体の印象

これがLOOX S9/70の外観です。重量880グラム。なかなか軽く、引き締まったデザインの外装もなかなかかっこいいです

1.2. 液晶表示

液晶は高輝度型ということですが、大変に明るくて驚きました。携帯機は屋外で使うことがありますから、これはありがたい性能です。輝度調整も8段階もあって、暗めの室内に適した輝度に落とすことができます。かなり好印象。

表示分解能は1024×600ドットで、携帯用途としては十分な分解能です。現在800×600のレッツノートを使っているので、分解能的にはこのほうが高いわけです。ただしドットサイズが小さいので、私にはちょっと辛かったですね。まず裸眼では使えません。眼鏡を使ってなんとかってとこですね。かなしい(´`;)

1.3. 全体の機敏さ

全体の動きの快適さはまあまあでしょうか。クルーソーモデルを使うのは初めてで、アプリの起動がちょっと遅い感じがしますが、これが省エネの秘密なんですかね。

これが故に10時間使えるっていうんなら、我慢できますね。というのも、私は欧米へ飛ぶ飛行機のなかでPCを使っていることが多いんですが、LOOXより遅いモードを使って液晶をくら〜くしても、海を渡り切るまでバッテリーが持たずに、あと少し使えればと思うことがよくあるからです。

1.4. 外部接続端子

外部端子は、USBが2個、LAN/モデム/外部モニタ各1個、PCカード1スロットの各端子があります。仕事で使うのに必要なものは一応揃っていますね。手堅いです。

なおモニタ端子は独自端子で、通常のCRTケーブルとは別売りアダプタを使って接続する構成。アダプタは出先で簡単に調達できるものではないので、出張時の持ち忘れがちょっと怖いかな。

1.5. LAN関係

最近のPCは100BASEのLANコネクタ内蔵が当たり前ですね。LOOXにもついています。この正月にレッツノート用に100BASEのカードを買った私はとても複雑な思いでLOOXのコネクタを見つめました。

見つめていても動作しないので、さっそくLANケーブルを差し込んでみました。

かないまる邸は、現在Yahoo! BBのADSLになっていて、モデムのあとにブロードバンドルータ一段、スイッチングハブを三段通って、LOOXと接続しました。

で、なんの設定もしないでブラウザを起動したら富士通のサイトとつながってしまいました。ははは。簡単だなあ、最近のは。

ADSLの速度は6Mbps程度で、デスクトップと同じスピードが出ました。

1.6. 共有関係

Windows95/98/Meとずっとファイルとプリンタの共有を便利に使ってきましたが、常にパスワードを立てて使ってきました。特に携帯PCは、会社や社外のイントラネットに暫定接続することが多いものですが、パスワードなしでは、接続しているとき誰からファイルをいじられるかわかったものではありません。

ところがLOOXに登載されているWindowsXP Home Editionではファイルやフォルダの共有を許可するときにパスワード管理ができないようです。

簡単なのは結構ですが、これはちょっとまずいですね。LOOXが悪いというのではなくてOSがそうできているのでしかたないですが、使う上での最大の注意点と言えるでしょう。


2. 親指シフトキーボード

では肝心の親指シフト関係をみてみましょう。



LOOXの親指シフトキーボードは非常に変わっていて、親指左右キー(無変換/変換キー)が上記画像のように空白キーの両側に分離しています。ポイントは、このキー配置で親指シフトが使い物になるかどうかで、かなり物議をかもしているようです。

2.1. オリジナルの状態はイマイチ

結論から言って、このキーボードは私にはイマイチでした。私は親指が太いので、この配列だと「ぃ」「や」の打鍵が難しいのです。

FOAU1の会議室での情報交換により、このキー配置でも打てる人や、むしろ離れているほうがよいという人もいることがわかりましたが、残念ながら私には辛い配置です。

それから「ん」キーの右のキー(「 : 」キー)が後退キーになっていないのも難しいところです。私に限らず親指シフターは右小指による後退機能は普通に使っていると思いますので、これは「ひえ〜」と思いました。

1.2. まずはJapanistのチューニング

このまま使える人はいいとして、私にはちょっと辛いのでいろいろと工夫してみましたので、その過程を書いておきましょう。

まず、付属のIMEであるJapanist2002の設定を、106/109JISキーボードに設定を変更します。次にJISキーボードを親指シフトに変換する「快速親指シフト」機能をONにします。

アレっと思う方もいらっしゃるでしょうが、現在の富士通さんの親指シフトキーボードは、基本的にはJISキー配列のコードを出しておき、これをエュレーションドライバで親指シフト化する方法を使っています。

ですからキーボードをJISキーボードに設定して、その上で快速親指シフトを使っても、キーボードを「親指シフトキーボード(LOOX)」に設定したのと基本的に同じ入力が可能です。

しかし快速親指シフトには、若干のキーカスタマイズ機能がついています。つまり、

・空白キーと無変換キーの入れ換え
・【 : 】を後退キーに、【 ] 】を取り消しキーにする

という設定が可能なので、これを使うわけです。

具体的な変更手順は、

1)
タスクトレイのJapanistアイコンを右クリックして設定を開けます。デフォルトでは簡易表示なので、「切換」ボタンを押して詳細表示にして、「キーボード」の項目を選択し、キーボードを「106/109日本語キーボード」にします。

2)
快速親指シフトにチェックをいれます。そのワクの中の設定を開けます。ここでキー配列を「モード1」に、親指シフトの位置を選択を、「左シフト=空白、右シフト=変換」にします。

3)
ついでに環境スタイルを「OAK」にしておきます。デフォルトは「標準」ですが、これはMS-IMEを意識した操作性で、OAKに慣れているユーザには使いにくい設定だと思います。ついでにUSBキーボードの自動判定にもチェックをいれておきます。

4)
ついでに、「文字入力」を開けて「自動的に起動する」にチェックをいれます。

これでどうなるかというと、指が太い私にも親指シフト入力が可能になりました。もとの配列で使える人はそのままでいいわけですが、私と同じように変換キーと無変換のキーが離れていると打ちにくい人、右小指が後退と決まっている人は、これで実用になるでしょう。

1.4. 親指シフトキーの高さ上げワザ

しかし私の場合は、まだこれでは不十分でした。親指が太くて短いため、左親指がマウスボタン(左ボタン)を押してしまうのです。



そこで、厚みが1.5ミリ、大きさが5ミリ×10ミリ角程度のスペーサを、空白キーの左端と変換キーに貼ってみました。親指シフトキーをほかのキーより高くするわけです。

今回は借り物なので粘着剤が残ってはいけないので、糊の移行がきわめて少ないテフロンテープ(中興化成のASF110 厚み0.08ミリ)を15回少々重ね貼りして厚いシート状にしてからカットしてスペーサを作りました。最後に少し大きめにカットしたテープをかぶせて、突起全体をくるむようにして、エッジの感触をよくしてあります。

このワザのオリジナルはSTARTさんだそうですが、もともと変換キーに高さが無いJISキーボードをエミュレーションで親指シフトにするときに使うワザで、「親指シフトキーボード」に実施するのは私が史上初かも(^_^;)


1.5. 今度はどうか

さて、今度はどうでしょう。じゃんじゃん。LOOXは私の太い指でもちゃんと親指シフトできるようになりました。けっこう快適です。

実は1.5ミリというのは、FOAUのほうで試用機の回覧にあたって、次のかたからテープを貼ったまま回してほしいということで、輸送の安全を考えて控えめにしたものですが、実は2.5ミリまで試してあります。もちろん2.5ミリだとさらに打ちやすくなります。

なおキーの高さ上げは液晶を壊す恐れがありますので、必ず次項の「蓋スペーサ」と併用してください。

1.6. 蓋スペーサ

親指シフトキーを高さ上げすると快適になりますが、もともとのキーが液晶とのクリアランスが0.5ミリしかありませんので、キーの高さを上げるとスペーサが液晶に触ってしまいます。液晶がキーを押し下げますのでただちに壊れるわけではありませんが、液晶にはいいことはありません。



そこで本体左右のスピーカ穴の上に、高さ上げをしたのと同じ厚みのスペーサを貼ることにしました。



蓋スペーサを横から見たところです。スペーサが蓋を押し上げていますので、キートップが液晶にふれるのを防いでくれます。LOOXのふたにはラッチ機構はなく、カム機構でフタが閉まる方向にバネが効く構造なので、フタのシマリにも影響はありません。ちゃんと閉じた状態で持ち運びできます。

なお、スペーサは、基本的にキーの高さ上げをしたのと同じ厚みかそれ以上のものを入れるべきでしょう。


3. 総括

では試用結果を総括してみましょう。

3.1. LOOXはPCとしてよくできている

まず全体として印象に残ったのが、LOOX S9というモデルが、携帯PCとして非っ常〜によくできているということです。JISキー版がヒット商品になっているようですが、なるほどと思います。

私はポッケ3を使っていたころ、10万円台で仕事に使える親指PCが欲しいと、会議室に何度も発言しました。それはそう簡単にはできっこないと思いつつ夢として発言したものですが、そのころのイメージのままの商品が目の前にあることは、なにかこう、特別の感慨があります。やっぱり時代は進化するんだなあと。

登載されているWindowsXPで特筆に値するのが安定なことです。なにしろハングしない。当たり前なんですが、結構感動しました。セキュリティーは笑っちゃうレベルなので、使う人には注意が必要です。

3.2. キーボードは、もう少しきちんと作って欲しい

OSとハードがかなり好印象なのにくらべて、キーボード環境はちっと不満でした。

親指シフト云々の問題以前に、感触が軽すぎる、キートップが低すぎて、前列が打鍵しづらい、という二つの問題点を指摘しておきます。

親指シフトについては、もっとキチンと企画して、ホンモノを作ってほしいと思います。

3.3. まとめ

結局LOOX S9/70は、非常にすぐれた携帯PCでした。親指シフトはちょっと変則ですが、多少のノウハウを知って使えば十分便利に使えると思います。まあ、私もこの液晶が裸眼で見えたらなあとは思います。





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