TA-DA7000ES勉強会



シートメタルボンディング

初稿 050126


新型パワーMOS-FETは単に薄型であるというだけではありません。内部構造にも新しい技術が導入されています。そのひとつが、半導体チップと外部電極をアルミの板で結合する、シートメタルボンディングです。



その前に、従来のボンディング方法をみてみましょう。通常は、アルミ線、銅線、金線などのワイヤを使っていました。

上の画像はTA-DA9000ESのベアチップボンディングです。つまり裸の半導体チップ(シリコンの小片)を基板に直接取り付ける手法を使っています。MOS-FETのようなパワーデバイスは、一度銅製の座布団にチップをつけて、その座布団を基板にハンダ付けします。上の画像も、基板、座布団、チップと三層になっているのがわかりますね。

そして基板とチップを結んでいるボンディングワイヤが見えています。

ここで細いのはFETのゲート電極(真空管ではグリッド、トランジスタではベースに相当します)、二本並んで見えているのが、FETのソース電極です。ちなみに座布団はドレイン電極になっています。

ソースのボンディングワイヤが二本になっているのは、TA-DA9000ES特有の構造で、通常は一本です。二本になっている理由は電流容量を大きく取るためです。このクラスのボンディングワイヤは一本で最大15A持ち、普通のパワーアンプを作るのには十分です。

しかしTA-DA9000ESは「瞬時最大電流供給能力」を24Aとしたかったので一本では持ちません。そこで二本使って30Aの容量をもたせていたのです。




この経験を踏まえ、新開発のパワーMOS-FETではアルミのシートで半導体と端子を接続する「シートメタルボンディング法」を開発しました。

黒い部分がパワーMOS-FETですが、FETのソースと三本の電極がアルミシートで結合されているのです (もう一本がゲート、反対側の4本は板状になっていて、FET下面のドレインがダイアタッチされています)。

このアルミシート部分の抵抗は1ミリΩ以下 となりました。TA-DA9000ESのダブルボンディングは5ミリΩ程度の抵抗値を持ちますか、これを完全に凌駕しています。

またこの配線の電流容量は数十アンペアとなり、パワーMOS-FETの性能をフルに取り出しています。

なお、パワーMOS-FETチップの設計も新しくなっています。内部抵抗も、TA-DA9000ESで使用したもの80ミリΩ程度でしたが、新型は40ミリΩと半減しています。その結果、発熱量の減少、ダンピングファクタの向上など、諸特性が向上しています。

それから、TA-DA9000ESではチップの熱呼吸を妨げないように、裸のチップを使いましたが、新型MOSは発熱が少ないこと、モールドが薄いことから、熱による応力は小さくなっており、ほぼモールドによる悪影響は解決したと思います。


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