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デモ・仕事・プライベート…

かないまるお勧めのソフトたち

その2

その2の開始 070707
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SB070707-1
---試聴用・音決め用・超高音質・SACD(CDハイブリッド)---
---[NEW] 070707


Timeless
ドン・フリードマン VIPトリオ

超高音質SACDを一枚ご紹介しましょう。ドン・フリードマン VIPトリオのTimelessというアルバムです。SACDマルチがとても自然ですが、CDトラックも手を抜いてなくていい音がします。

かないまるは、デジタルオーディオ黎明期から、セット設計と並行してセットで使うデジタルフィルタやDACの設計にかかわってきました。最近ではPS3の、DSD(SA-CD)→PCMダウンサンプリング処理 (出力は88.2kHzまたは174.6kHzサンプリング) の音質確認のお手伝いなどもしています。

こういうときに、多くの仕事はホリーコールやLYNXをまず聴き、次にクラシックのスケールの大きいのを聴きます。つまりこの「お勧めコーナー」でご紹介している、普段使い慣れている音源をまず使います。北米向けのモデルは、ラップも使います(あ、今度ご紹介しましょうね)。

オーディオ機器の電気回路、シャーシ、電源の設計は、ほとんどの場合、上記CDでほとんど仕上げます。特にポッピュラー音楽は、ある程度コンプレッサを使った普通の録音を使います。ホリーコールもコンプレッサが使われている音がしています。ポピュラー音楽はコンプレッサを使わないことはまずないと思います。

コンプレッサというと、ハイレベルを抑えて平均音圧を上げる、リミッタ的な使い方を思い浮かべる方が多いでしょう。

しかしコンプレッサは、平均音圧をあげるのではなく、ローレベルをすくい上げてローレベルを聴きとりやすくするという使い方もあります。多くのポピュラー音楽の歌手の声はこの手法を何らか使っていると思います。ポップスの制作において残響付加が不可欠なのと同様、コンプレッサも不可欠だと思います。

またコンプレッサは、ボーカルだけでなく、あらゆる楽器にもかけられます。たとえばベースにはリズム感がわかりやすくなるように、音程の変化点が明瞭に聴こえる処理をしてあるケースが多いようです。そうして全体として仕上がったのが普通のポップスです。

そして、オーディオ機器のチューニングは、こういう普通の楽曲は、まずちゃんとなるように仕上げます。 ホリーコールやジェニファーウォーンズは、コンプの使い方が上手で、また音質は相当いいですが、コンプ処理があるという意味では普通です。普通のCDがちゃんと聴こえるためには、クラシックやジャズの優秀録音だけ聴いていたのではだめなのです (多くのオーディオエンジニアはJPOPはあまり聴かないようですが、かないまるは同じ理由で南野陽子からモー娘、演歌まで、かなり幅広いジャンルを使ってチューニングをします)。

しかし、デジタル演算のアルゴリズムの開発や、デバイスそのものの出来不出来のチェックには、ローレベルがありま際立つような処理をされていない、つまりコンプをかけていないか、かけていてもわずかしか使っていないものが必用です。それも低音、特にベースの音が大切です。ベースの音はビット精度が悪いとすぐに壊れるからです。

たとえば、クラシックスにおける大太鼓、ティンパニー、コンバスといった低音楽器は、優秀録音を聴くことで、ローレベルが異常な場合は一発で「おかしい」と感じます。

しかしオーケストラはホール録音で残響が非常に多いので、もっと直接音的なベースの音を聴くこともしなくてはなりません。ポップスにはそういうものはまずありません。トラックダウンまではよいのにマスタリングでコンプがかかるのが普通のようですし。

残るジャンルはジャズということになり、ジャズはそういう目的で昔からよく使ってきました。しかし従来は所詮は16ビットのCDしかなく、評価能力はそこでリミットしていたといえるでしょう。CDの初期はそのCDの音をよくするためにアナログレコードをかけていました。

本当のローレベルがあるベースと、ナチュラルなピアノとドラムスで構成されているピアノトリオ。そういうのはCDは今は何枚かあるのですが、SACDトラックのできがいいという意味では、この「ドン・フリードマン VIPトリオのTimeless」は貴重。昔風のストレートな優秀な録音です。

特にSACDであることは、とても重要です。SACDは、可聴帯域では30ビット前後の分解能がありますので、ローレベルがキチンとしているこのような録音を聴くと、音質の良否からデバイスにしてもセットにしても、その部分の設計指針が簡単に立てられます。

CDトラックもSACDに準じた良好な音質で、SPDIF(デジタル入力)のアンプ内での状態をチェックするのに欠かせません。CDは今でも音源の主流だし、映画もこれからロスレス時代に入り、やっとCDクォリティーに達するところですので、そういう音源でのローレベルの仕上げはやはり必用なのです。

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オーディオ機器においては、この楽曲を再生することは、システムのローレベルの表現力を試されることになるでしょう。また音色を強調せずにナチュラルに録ってありますので、スピーカにクセがあったりすると、つまらない演奏に聴こえるかもしれません。この楽曲は、オーディオシステムのナチュラルさをストレートに試すことができると思います。

これは高額な機器がよいという意味ではありません。PC用の1万円前後のスピーカでも、沁みるスピーカはちゃんと沁みます。

かないまるの目の前には、PC用スピーカとしてはメジャーな某メーカのスピーカがあります。以前北米出張時に気に入ってここのスピーカを買ってきたことがありますが、必要があって最近同じメーカのものを買いました。

しかしまずはひどい音。結局、サテライトスピーカに付いていた飾りのモールドリングとパンチングメタルを除去し、SWのグリルもとってしまいました。特に通気性のないウーファのネットは、ある程度音圧が上がらないと空気が通らないようで、低音が鼻をつまんだような音になっていました。ローレベルなんて微塵もない。

邪魔者を取り去った後は、実にのひのびとしており、ローレベルも沁みるようになりました。一万円少々の5.1チャンネルサテライトシステムなんですけどね。デザインと音質は、しばしば相反するようで。

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みなさんのシステムでこのソフトをかけて、問題なくベースの音が「沁」みたら、そのシステムはおそらくローレベルの表現力をクリアしています。沁みなかったり、沁みても演奏に精気を感じない場合はまだまだ努力の必要があります。この録音はかなりHi-Fiですが、コンプのかかった楽曲ばかりでチューニングしていると、こういうストレートな録音が「つまんない」音になりがちです。

でもローレベルをクリアし、音色もナチュラルになると、今まで聴いていた楽曲もよりよく聴こえると思います。

そういう意味では機器の使いこなしは大事です。スピーカのメカニカルアースにこだわるばかりに、スピーカを硬過ぎる場所に設置していると、ある音が設置場所まで伝わって、そこから反射してくる振動がバフルをまた振動させることでローレベルを乱しているかもしれません。

設置した本人は、いいところしか聴きませんから欠点に気付いていないことがありがちです。「バシっ」「ドン」という音ばかりだして「いいねえ」なんてやっていると、Timelessがならないかもしれません。

もし「つまらない録音だ」と感じたらスピーカ設置場所とスピーカスタンド、あるいはスピーカスタンドとスピーカとの間に、薄いゴムを4点入れて見てください。いままで好きになれないと思っていた演奏スタイルも好きになるかもしれません。

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かないまるの試聴トラックは一曲目です。冒頭はやや足踏みが揃っていないようですが、18秒から入る主旋律からは、ピアノとベースがゆったりと厚い音を織りなし、ドラムスもいい感じで入ってきます。そこでぐっと沁みたらOKです。とにかくどこまで沁みるか。やってみませんか。


SB070707-2
---試聴用・鑑賞用・DVD
---[NEW] 070707



ヒマラヤ杉に降る雪
工藤夕貴&イーサン・ホーク主演

「沁みる低音」で思い出したので、低音が沁みた映画をひとつご紹介しておきましょう。工藤夕貴とイーサンホークが主演した「ヒマラヤ杉に降る雪」です。最近出たワーナー盤のほうが安いんですが、SPE盤しか聴いていないので、こちらを推薦しておきます。

この映画、とても重厚な話を木目細やかな演出、演技で丁寧に描いています。しかしオーディオ的にこの映画では、内容とは関係のない大事件があったのです。

それは、センター「NO」、サブウーファ「NO」にすると低音の描写がっくり落ちる。フル5.1チャンネルだと、並のハリウッド映画ではまず聴けない沁みる低音が作り込まれているのに、それが聴こえなくなってしまう。勿論どんな映画でもそうなるんですが、この映画は元が「沁みすぎる」ためか、とても深刻に感じられました。

そうなんです。この映画の低音こそが、実はダウンミックスによるビット落ちを防止する「アナログダウンミックス」を開発・搭載するするきっかけになったんです。勿論TA-DA3200ESにも「アナログダウンミックス」は入っています。他社にあるかなあ??。デジタルアンプにおいても、なるべくビット落ちしない処理を工夫して搭載しました。

思い出すと懐かしいですね。この映画。



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