コンポーネント+コンポジット

両方の映像を取り出せるケーブルを作ってみました

更新 070625
初校 070411


1) まえがき

PS3は、最も音のよいSACDプレーヤの一つだと思いますが、その音質を最大に活かすには、操作画面を「480i」のアナログビデオ出力として、HDMIには映像信号を乗せないのがオススメです。

一方ブルーレイディスク (以下BD) を鑑賞するときは、HDMIを活用するか、アナログビデオ信号のコンポーネント出力を1080iで高画質を楽しむということになります。

ハイビジョンをHDMI経由にする場合は問題はありませんが、コンポーネントを使う場合はPS3のAVケーブルを、「コンポジット用」と「コンポーネント用」をいちいち差し替える必要があります。

というわけで、SACDを聴く時は附属のコンポジットケーブル。BDを見るときはコンポーネントケーブルと、ケーブルの差し替えでしばらくやっていましたが、これはさすがに面倒くさい

PS3のAVアウトケーブルに、「コンポジットとコンポーネントの両方を出すもの」があれば、それを使いたいところですが、残念ながら存在しません。

存在しない理由は、普通は必要ないからですね。コンポーネントでつなげば、普通のモニターや液晶プロジェクターは480iと1080iのどちらがきてもそのまま映るのが普通でしょう。D50やG70は設計が古すぎるといえます。

そこで「無いなら作っちゃおう」というわけです。


2) 素材

素材は、まずこれです。



コンポーネントAVケーブル『SCPH-10490』 というもので、YPbPrとオーディオL/Rが取り出せるコードです。端子と金属ハウジングが全部金メッキされていて、なかなか品がいい。




付属のコンボジットケーブルと違い、全部のピンが出ていますので、コンポジット端子用のピンにビデオコードを取り付ければOKということになります。


3) コネクタハウジングの開け方



モールドのスキマにカッターの刃のような薄い金属を差し込んでおき、脇の4箇所のツメを壊します。残念ながらかないまるは、再生可能な形でツメを外すことができませんでした。最後に組み立てるときはテープを巻き付けることになります。

この蓋を開けると、すぐ後ろにあるノイズ止めのコアが動くようになりますが、これはいったん30センチ以上離した位置に移動しておきます。



コネクタの後ろから見たところです。使用時とはコードの上下が逆になっています。

左側の青、黄色、オレンジの線がYPbPr。その右のグリーンの線がグラウンド。赤と白がオーディオのL/R。右上に持ち上げてあるのもグラウンドです。グラウンドはハウジングの手前の部分でコードのシースをつかむベルト部分に集めて、一括かしめでハウジングへの導通が取られていました (ハンダなどは使われていませんでした)。


4) 端子配置

付属のコード(コンボジット)とこのケーブルを開けて中を調べてみた結果、必要な信号のピン位置は下記だとわかりました (ケーブル側から見た図です)。



コンポーネント用のAVケーブルにコンボジット信号取り出しの改造をするには、「Comp.」(オーディオ右チャンネルの隣) に同軸ケーブルを追加すればいいわけです。


5) コンポジットを引き出すためのケーブル

ケーブルはビデオ機器に付属しているたぐいのものを使いました。どなたも一本や二本はそのへんに転がっているでしょう。買っても高いものではありません。



こういうコードは、安いものでもちゃんと同軸ケーブルとして作られていて、インピーダンスも75Ωになっているのです。


6) 作り方



まずビデオコードのピンジャックを片側切り捨てて、約1センチ芯線を出し、先端をハンダ揚げして、長さ1ミリにカットします。シールドは軽くよっておきます。



端子側もハンダ揚げしておきます。狭いので「ちょん付け」するしかないからです。もしフラックスを持っているようなら、塗っておきます。



ただいまハンダ付け中。裏側に穴があるので、裏から作業してもいいでしょう。



くっつきました。



ハウジングのベルト部分で、グラウンド線とコードを一括して加えます。ラジオペンチを使い丁寧に抱え込んでください。



コードが折れないように、ベルトで締めた部分付近をテープで固めてから、上側ハウジング(プレーステーションロゴのあるほうのケース)に入れます。



下ハウジングをかぶせて、テープで止めます。



出来上がりました。ノイズ止めのコアはコネクタから10センチくらいのところまで近づけてテープ止めしておいてください。


7) プロ仕様

参考までに、試聴室用に作ったものもご紹介しておきましょう。



YPbPrとコンボジットだけしかありません。出口もピンジャックしかありません。会社の試聴室ではかなり本格的な同軸ケーブルで配線して限界に近い画質を狙っています。ですからこういうブレイクアウトケーブルは、なるべく短くして少しでも性能を上げたいということで作りました。

詳細は省略しますが、上の方のハンダ付けの画像でわかるように、もともとのケーブルはかなり細いものだったので、このブレイクアウトケーブルでは、ケーブルを全部コンポジット用の黄色ピンプラグケーブルから切り出したものに付け替えてあります。つまり元からついているコードより太く、また極端に短くなっています。グラウンド端子も太い線に変えてあります。

上の画像のピンプラグからプロジェクターまでは、5C2Vクラスの太さの高速同軸ケーブルを使っていますが、PS3からの引き出しのケーブルを極端に短くすることで、画質もかなり向上して見えるようになりました。


注記
PS3はコンポーネント出力からハイビジョン(720i以上)の信号を出力しているときは、コンポジット出力ピンからは信号が出なくなります。つまりこの両出しケーブルを作ったからといって、ハイビジョンとコンボジットが同時出力できるわけではありません(映像設定が480iのときは両方から同時に信号が出ます)。あくまでコンポーネントとコンポジットの両方の出力をケーブルの差し替えなしに使えるようにするための工夫です。

追加注記
プロジェクタなどが対応していないハイビジョン信号をうっかり出してしまい操作画面を見ることができなくなってしまった場合は、電源スイッチを一旦オフにして、再度オンにするときに数秒間スイッチを押し続けてください。電源が入ったらもう一度オフにして同じことを繰り返してください。PS3が完全にリセットされて、映像が480iに戻ります。