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バイワイヤリングすると音質がよくなるのはなぜですか

(200127誤記訂正)

ご質問)
バイワイアリングについて。利点としてよく、逆起電力云々というのを見かけますが、バイアンプはともかく、バイワイアリングってそんなに効果あるものなんでしょうか。電気的には繋がっているのだから、逆起電力は影響してしまうような気がするのですが。。。

お答え)
音質が変わる理由は、逆起電力はあまり関係ないです。高域用と低域用のネットワークにスピーカケーブルのインピーダンスが共通に入ることで、主に低域成分が高域側に漏れ込むことで音色が変わります。

スピーカに内蔵のLCRネットワークは、ドライブインピーダンスがゼロオームで正確に動作します。つまりアンプに直結した場合にもっともよく動作します。


ところがアンプとスピーカーの間にスピーカケーブルが共通に入ると、ドライブインピーダンスはゼロではありません。この分による電圧降下による変動はネットワークで分離できないため音質劣化の原因となります。特に高域用のユニットが低域成分に弱いほど(つまりユニットがプアなほど)音が変わります。

安いスピーカシステムでも、バイワイヤリングできるようになっているものがあります。これまた安いケーブルでよいので、きちんとバイワイヤリングしてあげると、意外にもかなり効果的なことがありますが、理由は高域ユニットにあまりお金がかかっていないからです。

またバイワイヤ時はケーブルにもそれぞれの帯域しか信号が流れなくなるので、安いケーブルでも高額なケーブルを使ったときに近付いた音がします。高価なケーブルは広い帯域で均等な質を維持することにお金がかかっていますが、帯域が専用化されると安い構造のケーブルでも音がよくなるのです。

以上はバイワイヤだけでなく、バイアンプでもよくなる理由を共有しています。バイアンプはアンプが別れている利点がありますが、ケーブル以後が必然的に別々になるので、バイワイヤリングの効果は当然あるからです。ひょっとするとその分のほうが割合的には多いかもしれません。

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さて、ではバイワイヤリングをやってみて「音が変わらない」か、「変わったが音がよくなったとは感じない」場合もあります。これは、

  1. 全体として表現力がない(もともと問題だらけで効果が分かりにくい)
  2. ケーブルやユニットが非常に優秀で、実際に変化が少ない(そもそも劣化していないので改善しない)
  3. スピーカの設計者が一本ケーブルで使われるケースを重視してその変化を折り込み済みで設計した

などのケースがあります。

1や2は理解しやすいですが、問題は3のケースです。

折角バイワイヤリンしたのに「質はよくなるがバランスが優れる」という不幸な状況になります。つまり最適状態がないということになります。

かないまるはこのタイプの設計姿勢は好きではありません。それならスピーカ端子は一組にすべきです。高級機でも端子が一組という設計はたまに存在します。それはそれで主張のある設計と認めます。

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なお、設計者はバイワイヤなんか全然推奨していないのに、かざりとしてバイワイヤ対応になっているケースも少なくありません。このような場合は設計者がバイワイヤリングで聴いたことがないことがあります。付属のケーブル(というか金属板)を外したとたんにメカ的な振動状態が大きく変わり、音がおかしくなるものがあります。こういう設計も困ったものです。

まあ、アタマで考えるより変わりますので、是非試してみてください。

ちなみにバイワイヤは変化の出方が比較的素直で、成功する確率は高い方法です。特に高域用と低域用に同じケーブルを使った場合は、ほとんどの場合失敗しません。違うケーブルを使うと音色調整が使い手の実力次第になるので、本職でも難しいことがあります。

またバイアンプはアンプの振動に対する音色を揃えてあげないと一体感のない音になりやすく、どちらかというとバイワイヤより難しい方法です。例外的にAVアンプのバイアンプ駆動機能は、そもそも一台のアンプであり、全体として設計時に調整済みなので失敗は少ないです。

ご質問者の返信)

丁寧なお返事ありがとうございます。逆起電力はそれほど影響しない、ケーブルにもインピーダンスがあるというところがミソでしょうか。

実はAVアンプでまずバイアンプを試そうと思っています。そのうち2chパワーアンプでメインを増強しようと考えているのですが、その際にはぜひバイワイアリングを試してみようと思います。どうもありがとうございました。