[111009]
AVアンプでバイワイヤリングを実施する方法

(111016更新しました)

ご質問

かないまるさんは、全チャンネルをバイワイヤ接続しているとお聞きしました。でもスピーカA+Bがないフロント以外は実際はむずかしいと思いますが、どのようにしているのですか。


お答え

まさか。全チャンネルはやっていません。まず自宅は、全チャンネルシングルワイヤリングです。会社はアンプの評価能力をあげるために、主要の5.1チャンネルはバイワイヤリングですが、サラウンドバックとフロントハイはシングルです。

とはいうものの、L、C、R、SL、SRの5チャンネルはバイワイヤリングしていますから、結構な実施率です。もちろんA+Bを使うわけではありません。

どうやるかというと、アンプから10センチ程度の引き出し線を使い、高域用と低域用のケーブルと束ねて、ハンダでまとめて接続しているのてす。

画像で説明しましょう。

1)
材料



画像のケーブルは便宜的なものなので、実際はお使いのものに置き換えて考えてください。

たとえば、高域用ケーブルと低域用ケーブルは直径20ミリもあるようなスピーカケーブルでもかまいません。

逆に引き出し線は長さ10〜15センチですが、AVアンプのスピーカターミナルに入る適度な太さで柔らかめのものなら、まずなんでもOKです。この引き出し線の太さを頑張りすぎるのは、あまり意味がありません。

理由は、スピーカケーブルにはスピーカターミナルのところの振動が糸電話のように銅線に乗っているからで、引き出し線はあまり太くないほうが振動的なフィルターになって音質はよくなります。


かないまるの常用、かつ勧め品の引き出し線はモンスターケーブルの XP-HPです。海外デモなどではキンバーケーブルの4TCをバイワイヤリングにしてよく使いますが、このときの引き出し線は、4TCの素線2本です。本当は素線は 1本だけのほうがフォーカス感などはいいのですが、低域は二本くらいが適切なのと、なにしろ剥いたときのキズで折れやすい線なので、デモということで保険のため2本使用です。

すべての銅線は、基本的に25〜30ミリむき出します。


2)
より合わせ





3本のワイヤをより合わせます。これはなるべくしっかりやってください。もしスピーカケーブルが太い場合は、まずスピーカーケーブルの高域用と低域用を先により合わせてます。次に引き出し線を長めに剥いておき、スピーカケーブルの上からしっかりと巻きつけます。

ここで、先端側の半分はあとで切り捨てますので、絶縁被服から10ミリくらいの範囲を集中的に巻き締めてください。キンバー4TCのような「単線集合タイプ」のケーブルは、まず軽くよります。次に先端付近を90度に曲げます。ここをペンチでつかめば、強烈に撚ることができます。


3)
ハンダあげ

巻き終わったら、ハンダあげします。上手にできない人がいるのでじっくり説明しましょう。



白線側は作業が終了しています。中までハンダがしみこんでいながらワイヤの外形も見えています。これが目標。

まず半田ごて (温度制御できる場合は350度〜400度) を銅線に当てます。次に糸ハンダでハンダ小手をつつき、ハンダを溶かします。糸ハンダの中からフラックスが出てくると、ハンダに流動性が出て銅線にしみこんで行きます。

ポイントは、フラックスとハンダをまず溶かして、その溶けた金属で銅線を加熱するイメージです。小手で銅線を加熱するイメージではうまくできません。



どんどん糸ハンダを溶かし込み、ハンダが銅線に広がり、銅線の下側から垂れるくらい染み込むのを見ながらゆっくりコテを移動します (染み込む前に移動してはいけません)。。



最後に小手を銅線の下にまわし、ハンダを銅線に差し込んで溶かし込みます。このようにすることで、ハンダを、よった銅線の内部に完全に染み込ませます。



切れるニッパで、被服の出口から10ミリ程度でカットします。切れ味はある程度よいことが音質のために必要です。なぜかというと、切れないニッパやペンチを使うとスパっと切れずにハンダの結晶構造にストレスをかけたり、最悪崩してしまうからです。

カットしたらそのカット面を見てください。割れているようだと確実に音質が悪くなります。再度加熱してハンダあげしてください (それで治ります)。

ま、工具はいいのを使いましょう。



アセテートテープ (日東電工 No.5 黒) か、テフロンテープ (中興化成 ASF-110) で絶縁します (塩ビのビニールテープは、2〜3年でとれてしまい危険なので使用禁止)。

テフロンのほうが音質はよいですが、巻きすぎるとダンプされます。0.08ミリ厚のテーブ4〜5回まで。まあ普通はアセテートテープでもOKでしょう。

絶縁は片側ずつおこない、正負 (画像では白線と黒線) を一緒に巻かないでください。音の勢いがそがれてしまいます。




出来上がり。

ここで、引き出し線側のシースはとってしまいました。こういう短い要素にシースが残っていると、ケーブルが低い周波数でダンプされることが多いので、除去したほうが開放的で勢いのよい音になります。XP-HPなどのような引き割りタイプも、少し接合を残しておくのではなく、裂いてプラスマイナスを離してしまったほうが音質が良好です。

この方法は、バイワイヤリングのほか、スピーカをパラレル使用するときにも使えます。連載中の電源タップの電線の結合も同じ方法です。
(この色の部分、差し替えました111016)

パラレル+バイワイヤリングだと5本を一度にハンダあげすることになりますが、火傷をしないように気をつけてください。