その10
断線の様子
初稿 090321
ハーベス・モニター4のツイータ部。使われているツイーターはオーダックス社製です。四角いプレートはアルミ製で、裏側の磁気回路が、振動板周辺の4本のビスで組みつけられています。
つまり4本のビスを外すと、磁気回路と振動板は分離できるようになっていて、これが断線しても一応修理できる理由です。こんな親切な構造のツイータは、現在はまずみかけません。磁気ギャップが相当広くて能率が低くなってしまうので、現代的なツイータはギャップを狭めて精密に組まれているからです。
ただ、この広いギャップのおおらかな磁気回路が、このツイータの持ち味を作っていることも確かでしょう。
ちなみに中央の橙色の部分は恐らくポリウレタン製のスポンジで、シルクドームを裏から押している素材です。ポリウレタンは紫外線と水分で加水分解してボロボロになりますが、振動板が黒いので紫外線が入りにくいので、変色はしていますが、形状は維持されたのだと思います (初期はたぶん真っ白)。マグネットはセラミック磁石で、磁気回路は外磁型ですね。
防磁構造にはなっていませんので、テレビの近くには置けませんが (ミスランといって色ズレが起こるからです)、最近は液晶が主流なので、防磁構造はそろそろ見直してもいいのではないかと思います。防磁構造にするとキャンセルマグネットか導磁キャップが必要で、どうしてもコストが掛かりますからね。
これが振動板側を裏からみたところ。ボイスコイル@はそのまま引き出し線となり、ターミナルAにハンダ付けされています。途中のB部はモールドベースにある溝を通して、ピッチで埋め込まれています (この部分は磁気回路と平面で接する必要があるためです)。
断線箇所はCです (三角の紙とテープは、かないまるが修理のために断線箇所を見やすくするために貼り付けたものです)。
そのままアップにしてみました。ボイスコイルは三角の紙の先端の「緑色に見える部分」まで引き下ろされ、そこからエッジ(振動板と一体成型)沿いにカーブを描いて引き出されています。
見にくいので別の画像。緑の物体は除去してあります。ややピンボケですが、ピントが合うと電線が見にくいので、あえてこの画像を選びました。銅線がプッツリと切れています。
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さて、では一つ上の画像の「緑の物体」はなんでしょう。実は接着剤なんです。引き下ろした銅線をボビンとエッジの角に止めるためのものです。緑色は?。そう緑青(ろくしょう)です。銅が錆びたときに出る物質の色。銅線が腐食した証拠です。このツイータはどうやら接着剤の選定がまずくて、銅線を腐食させるんですね。
引き出すときの銅線の曲げ角度が大きくて被覆が傷つきやすい反対側(ボビンでいうと上側)は10数年で切れるわけです。私のハーベスは左右ともに10年前に一度断線していますが、ボビン反対側での断線です。ハーベス・モニター4はたとえツイーターの補修パーツを持っていても同じようになっているはずなので、実はほとんど現存していないのではないかとかないまるは考えています。修理せずに稼働しているものがあったら奇跡に近いでしょう。
で、ボビンの下側 (振動板側) は、電線の引き出し部を急角度で曲げないので、被覆が傷になりにくいので20年近く持ったのでしょう。でも緑青を吹いて切れるというのは、結局被覆のピンホールから腐食したんでしょうね。銅線の被覆もポリウレタンですから、被覆がまず加水分解でダメになり、次に接着剤のせいで腐食したのかもしれせません。
さて、ではこの断線をどうやって直したかのか。
続きは次回。
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