その2

モニターHL4の背面を見る

初稿 090209



背面です。修理はバックバフルを止めている12本の木ねじを抜くことから始めます。

さて、ではこのビス位置。なにか気づきませんか?。

そう。ビスが板が振動するときの節の位置に打ってあり、腹に打っていないんです。フロントバフルは接着でガッチリついていますが、取り外しできる裏板は節で止めてあるわけ。

この「平板を節で止める」というのは、止める相手が面、あるいは枠のときは、板が鳴きそうで鳴かない (振幅の大きいところがロスになる) ので、音的によい方法で、うまくバランスをとるとクセのない開放的な音を作ることができます。

そういえば15年ほど前にマークレビンソンのプリの天板の止め方を山中先生のところで見たとき、ほぼ節にビスが打ってあり、へーと思ったことがあります。山中先生に「振動解析かなにかで決めたのでしょうか」とお聞きしたら「いや耳でやったみたいよ」とのことでした。

ちなみに、Rシリーズの基板の止めビスも端は意図的に外してあり、左右非対称ですらありますが、同じような理由です,。



背面に張ってある銘板のアップです。真鍮製の板ですが、単なる飾りではなく、明らかに板の分割振動をのバランスをとっていると思われます。さりげないですけどね。きちんとしたノウハウで音が練られていると思います。

番号は4348B。右チャンネルに使っているのがAです。モニターと謳うだけあって、ハーベス・モニター4は、左右の能率をバッチリ管理してありました。ツイータ、ウーファともに能率のペア管理をしていたようです。かないまるの所有するものも、も会社に2セットあったものも、聴いたものは全てセンター定位がバッチリ。そういうスピーカはまたエアもよく出るんですよ。

周波数特性で注目すべきなのは、50〜20kHz ±3dBとはっきり書いてあることです。実際発売当時、会社で買ったものの周波数特性を測りましたが、50ヘルツが-3dBできちんと出ていました (周波数特性の平坦性は銘板に書いてあるような真っ直ぐな特性では全然ありませんが、左右はよく合っていました)。

海外製の音のよいスピーカは50ヘルツまできちんと音を出します。また単に特性が出るだけでなくて、ベースの音程の変化点がはっきりわかる音を出します。ハーベスは比較的箱を鳴らすタイプですが、それでもその基本はしっかり出ています。

日本製のスピーカが音楽性がないと言われるのは実はこのへんが未消化だからだとかないまるは思います。結構大型なのに50ヘルツまで出ていないものも結構あります。日本人の多くは低音楽器にいろいろな意味で鈍感なので、そういう音でリリースしてしまうのだと思います。

ではなぜそうなるか。民族的に紙、木、草でできている家屋に住んでいた地域は西洋音楽の低音をあまりよく理解できていません。そもそも低音が育たない家屋なので低音に鈍感な遺伝子が多いんでしょうね。日本や東南アジアには低音の持続音を出す楽器があまりありません。リズノ楽器は鈴や太鼓のような打楽器がにないますが、これは西洋音楽的には「テンポ」楽器であって「リズム」楽器ではありません。

これに対して欧州は民家ですら石を積んだだけで100年住めるという家屋が多いので、低音の意味が全然違います。リズムは低音弦楽器の音程の変化点が握っています。AVアンプを設計していても、そのへんがきちんとでないと西洋人は絶対に認めてくれません。

米州は建物はツーバイフォーの木造が多いですが、紙で開放された部分はなく、低音はしっかり家屋内に閉じ込めます。またつい最近まで欧州人だった人の子孫なので、低音リズムの理解は欧州に近いです。

ただし、北米は田舎の人が多く、クラシック音楽経験が少なく、クラブなど至近距離での低音体験が多いことと、黒人音楽の影響力が強いので、欧州とは好みは同じではありません。ただ、リズムが低音の音程の変化点でつくられるという感覚は全く同じです。

そういうわけで欧米の音楽もベースがとてもよく鳴ります。日本のロックやポップスはその点が全く不十分なものが多く、Jロックでのベースは西洋のロックより平均的に5〜6dBは小さいと思います。歌謡曲のほうが、低音はよほど豊かですね。編曲者がジャズやクラシック音楽をきちんと勉強するからでしょう。





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